サステナブル
サステナブル社会の建築とまちづくりとは。。。
講演会に伺いました。
ドイツ文化会館にて。
シンポジウム
~環境先進国ドイツとEUの実態に学び、
日本のコンパクトシティ化に弾みをつける~
ドイツの例と比較しながら、
日本のサステナブル社会のあり方を、
団地再生、集合住宅研究、企業誘致、都市防災、各々の専門家の目線で
ディスカッションされました。
会場からも積極的な意見が出され、
大変有意義な時間となりました。
ドイツと日本では、国民性や法理的背景が違うことにより、
戦後のまちのでき方、都市のあり方、進み方が大きく異なっています。
温故知新。
その時代時代に合った対応をしてできた現在の状況。
その状況を把握した上で、
日本がどのように対応していくか、
私たちがどのような意識を持てば良いか。
非常に刺激となりました。
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講演会要旨
■基調講演
「サステナブル社会の建築・都市のあり方、造り方」
~60年代末からの日独社会での体験から~
<澤田誠二氏:団地再生支援協会副会長・元明治大学教授 【建築社会システム】>
■サステナブル建築・まちづくりを取り上げる意味は?
○グローバル化時代の需要テーマとされているが・・・
○環境大国ドイツはサステナブル建築でも先行するか?
■サステナブル社会の求めるもの
○環境問題→サステナビリティー(持続可能性)
○次世代に、何を残すのか?→地球資源を残す→消費の抑制
○少子高齢化、年金、医療など社会システムの再編が必要
○意識改革、ライフスタイルの変革
○建築分野・健康な建築を。2003。内井昭蔵、環境倫理学
■建築・まちづくりの基本は住宅~60年代からの学習~
○「住宅」は「建築・まち」の基本である
○世帯ごとの「営み」から集落、コミュニティへ
■都市という存在
○集落が形成され、「まち、都市」に発展
○まち・都市は産業の拠点:通商都市
○まち・都市は文化活動の場
■ヨーロッパと日本の都市の現在
○パリ、ベルリン、東京
■近代都市計画の系譜を辿る
○サステナブル社会のまちづくりードイツEUの実務に学ぶ
○ドイツEUの実務に学ぶ
○「共時的に見る」「経済的に俯瞰する」
■現代の都市計画・まちづくりのシステム
○自給自足型建設から産業化(システム化)供給へ
○1920年代は産業化(システム化)の始まり
○デザイン:モダンデザインからポストモダンへ
○専門家:棟梁、建築家、建設業の分担へ
○住民・生活者からの「距離」の拡大
■巨大な産業地帯の形成
○ルール、マンチェスター、京浜、北九州など
■ハウジング・システムの形成
○住宅・ハウジング:ベルリン・インターバウ
○IBA:提案の公募(コンペ)+公開実験
■60年代の未来都市提案
○さらなる社会発展をイメージするモデルや発展を
○建築デザイナー、都市デザイナーが提案
■60年代の未来都市提案
○都市空間の高層化、多様化→科学技術の高度化
■20世紀社会が生んだ豊かさ~その過程で顕在化した問題
○豊かな生活:サービス産業化発展
○高度なインフラストラクチャー:土木・交通工学の進化
○グローバル化地球コミュニティ:国際政治の構造改革→地球環境キャパシティの顕在化
■20世紀社会が造った負の遺産
○旧工業地帯:ルール、マンチェスター、京浜、北九州など
■20世紀社会が造った負の遺産~工業地帯の再生
○ルール工業地帯の包括的再生 IBAエムシャーパーク
・800k㎡の地域、水と緑ネットワークの再生・公園化
・21世紀社会形成の拠点プロジェクト100件を創出
■20世紀社会が造った負の遺産~大規模団地再生
○老朽化住宅団地の再生 ライネフェルデ産地再生世界モデル
・東西冷戦の終結→人工流出・社会変革→まちの再生
・再生マスタープラン、街区毎の再生→国連ハビタット賞
■新時代の建築・まちづくり~何を目指すのか
○地域、国家、地球コミュニティーの維持と発展
○地域ごとの適正な循環システムの形成とネットワーク化
○地域文化の継承と再生の基盤づくり
○コミュニティ合意による生活・産業・経済・文化の運営
○新たな住環境づくりの企画・デザイン・建設・プロジェクトマネージメント
■再生型「建築・まちづくり」~3つの再生~
○コミュニティの再生・活性化
○住環境の再生・再編成
○ハウジング・まちの経営システムの再生・効率化
■新時代の建築・まちづくりの技術と産業
○建築・都市を保存・再生し、長く使い続けられる技術、産業
○オープンビルディング・コンセプト
○残すものと残さないものの識別
■オープンビルディング・コンセプト
○3つの住環境レベル レベル毎の合意形成 住環境の長寿命化
・アーバンティッシュ・レベル【自治体】:100~200年
・スケルトン(サポート)レベル【建築家】:50~100年
・インフィル・レベル【居住者】:10~20年
■オープンビルディングの開発と普及
○集合住宅、NEXT21、スケルトン・インフィル住宅
○プレファブ住宅、住宅部品産業
■サステナブル社会の「まちづくり拠点」
○一斉に老朽化し、高齢社会対応などの活性化が必要に
○新社会システムづくりー高齢者支援、介護、子育て、新エネルギー、ランドスケープー
○連帯意識を育てる
■サステナブル社会のまちづくりの指針
○「民意」を誘導する知の創出・集積・分析・評価と編集の能力
○民主的なプランニングプロセスマネージメント
○「縦割り」を脱した産学官間のコラボレーション→「横ぐし」
○オープン・コンペティション
○提案公募、公開審査、公開実験によるイノベーション
■ドイツと日本の違い
○ドイツ:5年ごとに段階的に。
○日本:まとめて。今は抜本的な改革が一度にできる可能性
■パネルディスカッション
「サステナブルな住環境を実現するために」
モデレーター:浅野忠利氏 <NPO屋上開発研究会顧問・元竹中工務店常務取締役>
パネリスト:・大月敏雄氏 <東京大学大学院建築学専攻准教授【集合住宅研究】>
・織田正雄氏 <日独協会理事・元ベルリン日独センターコーディネーター【企業誘致】>
・長谷見雄二氏 <早稲田大学理工学部建築科教授【都市防災】>
■サステナブルについて
□大月氏
・1920年代の団地でも、世界では世界遺産にもなるほど残されている物が多い。日本では経済的な理由により、取り壊されている。
・日本は、単品をつくり、単品をつくりかえる技術はピカイチ。幅広い認識で捉える意識や認識が薄い。
・循環システムの必要性。技術と人。
・東北の復興住宅→モノの循環はできるが、人の循環が考えられていないのでは?人の循環。
・古い団地においても、一度ではなく、そのうちの一部を建て替えると、徐々に循環が起きる。親子の近居。
□織田氏
・ドイツと日本は相続税制度が違う。
→ドイツ:個人の財産を守る考え。ひとりひとりが資産の存続。資産は残る。→家のみでなく周囲の環境も子孫に残す考え方
東西統一時の大統領の言葉「君たちが悪かったのではない。制度が悪かった」
→日本:みな平等にという考え。金持ちから資産を取り上げる。
□長谷見氏
○伝統建築に遡ってサステナブル社会を考える(防災編)
・温故知新
・「歴史的まちなみ」の防災計画は災害には弱いものという前提だった→現在残っているということは、寧ろ「強い」ことの現れでは?
・「伝建地区」山口県 萩 佐々並市 →緩いカーブが特徴のみち。景観のためではなく、土砂崩れを防止する「防災」」のためにできた。景観を守ることによって防災が維持されてきた。
○防災の意識は10年経つと風化→他の価値と結びつけることが必要。
・長続きする防災ソフト。
→「高山」は祭りが地域防災のエンジン。防災ソフトとしての最大の長所は、知らず知らずのうちに防災ソフトになっているところ。
・日本の祭りの多くは、小氷河期といわれ、世界的に大災害が多発した18世紀に始まっているのは偶然ではないだろう。
・祭りのように、災害との関係がわからないほど溶け込むこと。
■人口減少、高齢化、環境保全を実現するための社会システムは?
・各々が専門家になりすぎて、お互いに話が通じなくなっている。共通言語が必要。「オープンビルディング」<澤田氏>
・東北視察した際に、縦割り行政による各分野の調整に労力を費やされていたのが印象的。<浅野氏>
・3.11では、町長始め行政の専門家がお亡くなりになり、初動が遅れてしまったこともある。公平性、どういう人を救うべきか。自然発生的に「横ぐし」の小さいチームが沢山できている→日本の基盤にならないか?<大月氏>
・心とモノ<浅野氏>
・日本は「縦」社会。辞令で上から指示される。ドイツは「水平」社会。新人と経営者が水平に「契約」される。行政と民間も水平のため、両者の行き来がスムーズ。<織田氏>
・「縦割り」から「横ぐし」へ。<浅野氏>
・日本のストック社会をどうするか。建築基準法は「新築」が基準。→「縦割り」ではうまくいく。すでにあるもの、改修などには適していない。すべてを満足していなくても「健康」なものはできる。制度の問題。<長谷見氏>
■会場より
・縦社会は、高度成長の際には便利で、必要で意味もあった。結果的に公害や環境問題を起こしてしまった。「横ぐし」とは生活のこと。小さな単位での。土地の所有権、借家、持家も重要。シェアの可能性。
・日本は憲法で個人の資産が守られている。
・「契約」が人と人との間をつなく道具。日本は言葉がなくても成立する社会があったがこれからはどうするか。ニーズの多様化に合わせたネットワークの必要性。スケルトンの賃貸システム。「区分所有法」の課題。
・建築は長期耐久商品であるという、「投資」の麺からの課題もある。国土の3割しか平野がない、地震が多い、といった日本の特異性。
・ドイツと日本の一番の違いは、「建物はいきもの」」という想いではないか?「縦割り」「横ぐし」ではなく、HUMANであるかないかでは?
■まとめ
・「縦割り」から「横ぐし」へ。
・オープンビルティングを基本に。
・現場市町村の長が主導権を。
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